震撼するほど恐ろしい話だった。表紙絵だけ見ると楽しそうに二人でローラーブレードをしていて、さてさて、と楽しみにページを繰ってしまったのだが・・・・・・これまで22冊出ている中でもこんなに人間の業というか、深い暗闇を感じたものはない。これが邦訳あってベニスのガスパールが出ていない理由が益々解らない。
見開きはパリの街。階段が入り組んでいるから或いはモンマルトルまで来たのかな、などとも思うけど、普段の活動地区はマレ地区の筈なんだよね。楽しそうにローラーブレードを履いて遊ぶ子供たちを眺めているのはセーヌ河にかかる橋の上か?
「いいなー」という言葉が聞こえて来そうだ。こうした下地があって、とうとうその日がやって来た。リサの誕生日。ガスママはリサの誕生会に持って行くガスパール分の贈り物を用意する。(それがわたくしのお気に入り「きいろちゃん」である。)
当日、最後まで開けるのを取って置いた両親からの贈り物は、何と・・・・・・ガスパールも欲しくてたまらないものだった。ここの場面、目を真ん丸く剥いているガスパールが可哀想になるくらいだ。そして、おばあちゃんの贈り物の踊り靴を履いて見せて喜ばせている間に、とうとうガスパールは盗みを働いてしまった!!
邦訳立ち読みした時、確か「かくしちゃった」くらいになっていたと思うんだけど、元はj’ai vole les rollers et je les ai
caches dans mon sac.である。はっきりと、きっぱりと、「盗んじゃった」「僕の鞄の中に隠しちゃった」と書いてある。