リサとガスパールの ひみつ基地

Gaspard a Venise
ガスパール、ヴェニスにて
(邦訳なし)



ベニスの愛(初出記事へ)

 ブロンズ新社でもアマゾンの和書でも出て来ないということは、やはり邦訳未出? でも、子供に読ませたくないという理由ならLa jalousie de Gaspardの方が余程恐ろしい話である。どうして出ないのかな。

 因みにフランス語の発音では「ギャスパー ア ヴニーズ」となる筈だ。地名も国によって豹変するよ。リサガスの居るパリだって「ペァリス」だの「パリージ」だの変えられてしまうからおあいこ。日本人が漢字の国の固有名詞を日本語読みしていたのと同じさ。

 さて、ガスパール一家はヴァカンスでヴェネツィアに行く。朝から晩まで博物館めぐり、ガスパールはいい加減飽きてしまって、運河に停めてあった赤いカヌーに興味引かれ、ふらふらと乗り込んでしまう。家族なんて置き去りだ。
 速い! 楽しい!
 しかし運河の曲がり角でCATASTROPHE! 観光客の乗ったゴンドラと衝突、ガスパールの方は無事でそのまま乗り逃げ(笑)。細い運河から広いところへ。ここのパノラマが広大な気分にさせる見開きだ。

 日も暮れて来て上陸する。なんだか知らないとこに着いてしまって、流石のガスパールもちょっと心細くなった。教会に隠れていたんだけど、警察のサイレンでびっくりした。捕まっちゃうの?!

 これが最初に出た作品かどうかは知らない。でも、2006年現在仏版では第一巻ということになっている。リサは全く出て来ない。だから、ひょっとしたら本末転倒ながら、淋しい感じがする。やはりガスパールとリサは二人で物語になるのである(と勝手に決めつける)。芸が細かいことに、ガスパールしか出ない話の背表紙にはガスパール一人が立っているよ。

 ともあれ、赤・青・黄・緑のコントラストが気持ち良く、楽しい本である。
 自分としては物語結末が大団円になっているところ、懐の深さを感じた。叱りつけるより、むしろ良心への問いかけを促すのではなかろうか、などと思う。読み方によっては深い話。子供向けの絵本ではない。子供が読んでも、まあいいけどさ。

2006/04/12/mercredi



libres



inserted by FC2 system